最近のスマホ向けRPGは豪華の一途を辿っていますが、インディーゲームだとシンプルさをとことん突き詰めたような作品もあります。あまりゲームをやる時間はないという人には、そのほうがありがたいこともあるでしょう。
今回ご紹介する『ゆぼひくっ クエスト!』も、そんなシンプルRPGのひとつです。
『ゆぼひくっ クエスト!』について
『ゆぼひくっ クエスト!』はインディーズデベロッパーの「今北工業」がリリースしたアプリで、Unity製のRPGです。
プレイヤーは召喚した勇者たちでパーティを組み、クエストを順々にクリアしていきます。大まかに言って、やることはほとんどそれだけです。ちょっとした装備品などもありますが、基本的にはクエストをこなしていけば勇者たちは勝手に強くなっていきます。戦闘もスキルの使用タイミングを決める以外は、自動で行われます。
勇者を育成ではなく作成する
キャラクターを召喚して戦わせる……スマホRPGのスタンダードなシステムですが、本作の最大の特徴は、キャラクターの名前や職業、ステータス、スキルに至るまで完全にランダムに決められるということです。そしてステータスは「体脂肪率」とか「オタク度」とか、何だそりゃ?というユニークなものであふれています。
これによって同じ勇者、同じパーティになるということがまずありません。勇者育成ではなく作成RPGといえるのです。ゲームを進めていけば最初からある程度強い勇者を作れるようになりますし、先輩勇者を合成に使ってしまって一気にレベルアップということもできます。
課金アイテム……だけどわりとよく手に入る「石板」
本作には課金アイテムとして「石板」が用意されています。石板を1つ使用することで勇者を1人召喚できます。
石板はクエストをクリアすれば、少しずつ集まってきます。勇者の強さに関係する「ステータススロット」やパーティの人数に関係する「パーティスロット」を増やしたり、ゲーム内通貨「ゴールド」の購入にも使えますが、全体的にそれほどの難易度ではなく、まったく課金しなくてもじっくりプレイすれば最後まで到達することは可能です。いわゆる無課金勢に優しいゲームなのです。
ですので「どうしても手軽に攻略したい」「さっさと勇者たちを強くしたい」という人向けの課金要素と言えそうです。
開発者「今北工業」さんにインタビュー!
なぜこういった課金要素が導入されたのでしょうか? 開発者である「今北工業」さんにお話を伺いました。
――課金アイテムはなぜ「石板」にしようと思ったのでしょうか?もし他にもこんなアイテムの候補があったというのがあれば、教えてください。
開発中は「勇者の魂」ということで進めていました。なので、内部的には「Soul」という名称になっています。
「石板」になったのは、ちょうどいいアイコンをフリー素材で探していたときに現在のアイコンを見つけ、ついでに名前も変更という単純な流れです。
ゲームの設定としては、「石板に宿った勇者を召喚する」という設定にしてあります。他の候補は「勇者のコイン」や「クリスタル」も考えました。あまり深く考えず、ゲーム内通貨である「ゴールド」とはっきり別物とわかる形であれば何でもいいという感じですね。
――購入できる石板の数は4種類ありますが、売り上げの比率を教えてください。
一番売れているのが、一番安い120円。続けて一番高い1200円、600円、最後に360円の順です。クエストを1つでもクリアすれば、「課金なんてほとんど必要ない」ことがわかるようになっています。
課金要素はどちらかというと、開発への応援という部分が強く、他のゲームと比較すると単価が安いかな?という設定にしてあります(1回の召喚が5円以下)。
買い切りアプリの設定と比較して、360円が一番売れるかな?と思っていましたが、思いのほか1,200円がよく買っていただけているのに驚きました。ありがたいことです。
――課金要素のラインナップや価格帯について、参考にしたアプリはありますか?
『ファイアーエムブレムヒーローズ』や『モンスターストライク』、『パズル&ドラゴンズ』などの価格設定は見させていただきました。主にガチャの単価を見るくらいですね。
あとは有料アプリの上位の価格設定なども参考にしましたが、もともと「課金しなくてもゲームは進められる」というスタイルで作っていましたので、そこまで参考にしたアプリというのはないのかもしれません。
まとめ
課金しなくても問題なくクリアできるというアプリを作る人も多いかと思います。『ゆぼひくっ クエスト!』ではインタビューにもあったように、課金要素は開発への応援という意味合いが強いそうです。ユニークなゲーム性が評価されたからでしょう、1,200円という安くはない単価のアイテムにも課金してもらえるという結果に繋がっています。
「シンプルなゲームの課金アイテムは低単価でなければならない」
このように決めつける必要はないことがわかります。ぜひ参考にしてみてください。
文・アライコウ
十数年、インディーと商業でノベル・アドベンチャーゲームに関わってきました。
Webサイト:https://arai-create.net/
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