スマホアプリの課金要素は、ゲームバランスと密接な関係にあります。課金しなければまったくクリアできないというゲームは困ってしまいますが、簡単すぎても収益に繋がってくれません。
今回はそのあたりのバランス調整が上手いと感じた、『テラセネ』というアプリをご紹介します。
『テラセネ』について
『テラセネ』は個人開発者の「ふりふら」さん(SleepingMuseum)がリリースしたアプリです。Unity製で、ジャンルはディフェンスゲームとなっています。
夜道をひとり歩く少女に近づいてくる悪魔たち。プレイヤーは太陽となって、光を浴びせることで敵を撃退していきます。しかい太陽に弱いのは少女も同じで、傘を差していないときに光を浴びせ続けるとダメージとなり、あっけなく死んでしまうのです。
守ってあげたいのに、自分の光は容赦なく少女を傷つけてしまう……「恋い焦がしディフェンスゲーム」とは実に上手いキャッチコピーだと思います。
難しいけどやめられない、絶妙なゲームバランス
画面をタップすることで太陽の光の方向をコントロールし、少女にダメージを与えるのを避けつつ、上手く敵を倒していく。それが本作の最重要ポイントです。
また、敵を倒して入手できる「オーブ」を消費することで、光の種類を変えることができます。いわば武器の変更で、どの光なら効率よく倒せるかを考える楽しみがあります。そしてステージの最後には強力なボス敵が現れ、苦戦を余儀なくされます。
全体的には決して簡単ではありませんが、「あとちょっとでクリアだったのに」ということが多い絶妙な難易度なので、何としてもクリアしたいという気持ちにさせられます。
ストーリー仕立てになっているのも見どころで、少女の行く先が気になります。そしてプレイヤーである太陽は、最後にどうするのでしょうか? ぜひプレイして確かめてみてください。
2種類の消費型課金アイテム「オーブ」と「月の涙」
本作には消費型課金アイテムが2種類用意されています。それが「オーブ」と「月の涙」です。
オーブはすでに述べたとおり、一定数集めると武器の変更ができるようになります。しかし楽にクリアしたいという場合、オーブに課金して一番強力な光を立て続けに使用するといったことが可能です。また、キャラクター図鑑の解放にも使えます。
ゲームオーバーになると最初からやり直しになるのですが、月の涙があれば途中から続けることができます。プレイ時間の短縮に繋がるアイテムなのです。
開発者「ふりふら」さんにインタビュー!
なぜこういった課金要素が導入されたのでしょうか? 開発者である「ふりふら」さんにお話を伺いました。
――「オーブ」と「月の涙」という2種類のアイテムを導入するにあたり、重視したことは何でしょうか?
どちらもゲームの攻略に必須ではないアイテムですが、使うことでよりクリアしやすくなるように、ゲーム本編の難易度はやや高めに設定しています。
「オーブ」を消費すると太陽の光を一時的に変更することが可能です。それぞれ一長一短の性能で場面に応じて使い分ける必要がありますが、シューティングゲームのボムみたいに半ば無敵状態で使えるタイプの光があり、難易度の高いボス戦もその光を連発することで突破できるようになっています。
「月の涙」はコンティニューアイテムで、ゲームオーバー時に中間ポイントから再開することが可能です。ただ、ボス戦で負けてコンティニューした場合は、ボス戦開始時からの再開になり、それまで与えたダメージがチャラになってしまう仕様なので、ユーザーさんからの反応はいまいちです(改善したいのですが、ゲームの作り的に難しい状況です)。
――4つのアイテムの売り上げの割合はどうでしょうか?
以下、売れている順に列挙いたします。
- オーブ×3000
- 月の涙×30
- オーブ×1000
- 月の涙×10
月の涙×30の売れ行きが意外にいいのですが、投げ銭的に買ってくれているユーザーさんも多いようです。
――課金画面の「高いわ!」ボタンがユニークですが、これを付けてみようと思ったきっかけは何でしょうか?
雰囲気を重視したゲームだったので、課金画面もゲームの一部として楽しめるような仕掛けがほしいと思い、付けてみました。ボタンを押していくと、本編では語られないキャラクターの身の上話が展開し、同情を誘います。そのまま課金に至らなくともキャラクターや世界観に愛着が湧いてくれれば嬉しいですクマ。
ずっと押していると『テラセネ』のLINEスタンプの宣伝もしてくるのですが、それをきっかけにスタンプを購入してくれるユーザーさんもいました。アイテムが手に入るリワード広告についても、同様のキャラクターがなるべく世界観を壊さないようにすすめてくる仕掛けになっています。
まとめ
必ずしも課金の必要はないけれど、課金することで攻略しやすくなる……これは課金を導入しているならどんなアプリでも共通することですが、『テラセネ』は難易度がほどよく高いので、課金意欲が刺激されるプレイヤーは多いのでしょう。そして消費型アイテムが2種類用意されているというのは、なかなか珍しいかもしれません。
課金画面もゲームの一部として……というのも、大いにクリエイターの参考になるのではないかと思います。
『テラセネ』については、先日の東京ゲームショウ2018レポート記事でも少しご紹介していますので、そちらも是非ご覧ください。
【イベントレポート】「東京ゲームショウ2018」注目のインディーゲームをご紹介! - itemstore BLOG
文・アライコウ
十数年、インディーと商業でノベル・アドベンチャーゲームに関わってきました。
Webサイト:https://arai-create.net/
Twitter:https://twitter.com/araicreate