前回、「子供にも優しい課金とは?パズルゲーム『もじたん』の導入例」という記事を書きました。
子供にも優しい課金とは?パズルゲーム『もじたん』の導入例 - itemstore BLOG
子供も遊ぶアプリの課金要素に関しては、多くのクリエイターが興味を持っていると考えられます。そこで今回は、この件をより掘り下げて考察してみようと思います。
まずは、前回ご紹介した『もじたん』の開発者さんに簡易インタビューをお願いしたところ、快諾してくれましたのでご覧ください。
『もじたん』開発者インタビュー
――『もじたん』の課金アイテムは年少者に配慮されていると感じましたが、この内容と金額に設定した理由をお聞かせください。
イメージ的には360円のものが一番買いやすいのかなという感じで、それ以下、それ以上という値段付けをしています。
600円以上は買う人はいないだろうと思って作っていたのですが、一番高い1,080円のコインを大人買いする人が結構いたので、びっくりしました。
――ヒントコインは10枚、45枚、100枚、300枚とありますが、課金率が一番高いのはどれでしょうか?
一番課金率が高いのは、やはり10枚のコインでした。120円で買いやすいのがあるのだとは思います。
ただ、収益ベースで見てみると、それぞれの合計収益は横ばいという感じはあるので、とにかく課金に関してはバリエーションを用意しておいてあげると間口が広くなってよいのかなという結果に繋がりました。
――課金アイテムに関して、ユーザーから要望が寄せられることはありますか?
課金アイテムに関する要望は、全部無料にしてほしいというもの以外はなかったように思います(笑)。
アイテムの内容、種類、価格帯
『もじたん』のアイテム「ヒントコイン」は、解答のヒントを見られるというシンプルなものです。課金のメリットは確実にあると言えます。そしてこのヒントコインを、4種類のパターンで課金して購入できます。
一方で、ソーシャルゲームではどうでしょうか。有料ガチャを引くための「石」が課金アイテムの定番ですが、欲しいカードが手に入らない――つまりハズレを引く可能性もあり(というか高い)、場合によっては損をするだけということがあります。また、1回のガチャにつき数個の石が必要になることが多く、最低額の課金をするだけではガチャを引けないことがあります。
以下、『もじたん』と某人気ソーシャルRPGにおける課金の種類と価格帯を比較しました。
有料ガチャを導入しているソーシャルゲームは、どの作品もおおむね右の表のようになっていると考えてよいでしょう。
子供が遊ぶアプリで大切なのは、あまり高額なアイテムは用意しないことです。というより、損をする可能性のあるガチャとそのための消費型アイテムを導入してはいけないと言いきっていいかもしれません。したがって、ソーシャルゲームの価格設定も参考にしてはいけないということです。
『もじたん』は1枚あたりの価格も安く、最高額もソーシャルゲームのそれと比べて1/10程度です。根本的に課金に関する考え方が違うことがわかります。
どの程度のバリエーションが必要か
開発者インタビューにもあったように『もじたん』は360円を基準にしています。「一番購入しやすそうなのはこの価格帯」と決めておくのは、有力な方法です。ストアで設定できる最低額のアイテムも、確実に必要でしょう。
そして最高額は1,080円ですが、これを購入するユーザーが結構いたということなので、もう少し高め――倍の2,000円程度までなら、バリエーションに加えてもよいかもしれませんね。
ただ、あまりバリエーションが多くてもユーザーは迷ってしまうので、4~6種類くらいの範囲がよさそうです。
まとめ
開発者インタビューの最後で「課金アイテムに関する要望は、全部無料にしてほしいというもの以外はなかった」と聞けました。これは笑い話に思えますが、ひとつの重要なことが読み取れます。
人気作はグラフィック、サウンド、操作性などのシステム――いろいろな要望が寄せられるのが宿命です。しかし課金についてはあまり要望が寄せられないのです。せいぜい冷やかしに「無料にしろ」「もう少し安くしろ」と言うくらいでしょう。
つまりこのセクションは、クリエイターがしっかりした意思を持って、外野に左右されずに決定しなければならないということです。まずはそれを認識することこそが、よいマネタイズに繋がるのだと思います。
文・アライコウ
十数年、インディーと商業でノベル・アドベンチャーゲームに関わってきました。
Webサイト:http://arai-create.net/
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