以前、このブログでもご紹介した「ニコニコ自作ゲームフェス2018」にて、カイト株式会社賞に選ばせていただいたのが、ダンジョン探索型のアクションRPG『魔王と迷宮』でした。
今回はその作者であるくろさんにお話をうかがってみました!
くろさんってどんな人?
-- ご職業についてうかがっても良いですか?
業務系アプリケーションに対するシステムエンジニアをやっています。
(ゲーム関係ではありません)
-- 自作ゲーム開発を始めたきっかけや自作ゲーム開発歴についてお教えください。
昔のことであまり覚えてはいないですが、初めて家にPCが来たときにVectorのフリーゲームを色々ダウンロードしてプレイしていました。
そのうちに自分でも作ってみたいと思ったのがきっかけですね。
今から18年位前になると思います。
ですが、開発歴18年かと言われるとやってない期間も結構ありましたので大体10年位だと思います。
-- 好きなゲーム、ハマったゲーム、影響を受けたゲームはありますか?
その当時の年齢により、アクション(ロックマンとか)にハマったり、RPG(ドラクエ、FFとか)にハマったり色々でしたが、過去一番ハマって影響を受けたゲームは「Ultima Online」だと思います。
色々なゲームをやりましたが、ゲームの中で「生きている」と感じることが出来たのはこのゲームだけでした。
コンテンツにとらわれないで色々なことが出来るゲームだったので、ユーザー自体があの世界を作っていた(生きていた)のだと思っています。
いつかそのようなゲームを作ってみたいと思いますが実現は難しいと思っています。
ニコニコ自作ゲームフェス2018を振り返って
-- 改めて受賞についてのご感想をお聞かせください。
本当にありがとうございます。
色々悩んだり、問題もありましたが、最後まで作って良かったです。
-- ご応募された経緯や動機について教えていただけますか?
過去にも応募をしたことがありまして、そのときは敢闘賞を受賞しました。
それがきっかけでマックスむらいさんにプレイして頂いたのですが、面白いと言って頂けたのが嬉しかったですし、影響が大きかったので今回も応募してみようと思いました。
-- 過去にこういった公募やコンテストに参加されたご経験はございますか?
ニコニコの自作ゲームフェス以外ですと、HSPのコンテストにも応募したことがあります。
そのときにも賞を頂きました。
その他ですと雑誌に数回載せて頂いたことがあります。
-- 今回参加されてみていかがでしたか?
今回は授賞式に参加ということで、とても、とても緊張しましたが、良い思い出になりました。
本当に余裕が無かったので、次回もし機会があれば、楽しむ位の余裕を持ちたいですね。
受賞作品『魔王と迷宮』
-- 本作のアイデアはどのようにして生まれましたか?
前々から気になっていたUnityを使ってみたい!ということで、簡単なゲームを勉強がてらお試しで作ろうという所からスタートしました。
当初は「全方位から迫りくるモンスターを倒すだけ」という単純なゲームを想定していたんですが、勉強していくうちにああしたい、こうしたいという悪い癖が出てきまして、今のような形になりました。
-- デザインやグラフィック素材はどのようにして制作されていますか?
モデルなどの素材はほぼ全て妻が作成しています。
私もですが、妻ももちろん素人なので今回半ば強引にモデル作りをお願いしてました(ごめんなさい
音楽に関しては開発仲間の「相葉 慎」さんに作成して頂いています。
ストーリーに関しては同じく開発仲間の「遊馬 連」さんに作成して頂いています。
その他、フリー素材やUnity Asset Storeなども利用しています。
-- ゲームの仕様として特にこだわられた点はございますか?
「スマホで動作する」という点に注力しました。
スマホでゲームをする人の特徴を考えて
①1回のプレイ時間は短くしたい。
②何回も遊べる構造にしたい
③でもメリハリは付けたい。
と考えた結果、
「排除者の実装によるワンプレイの短縮化」「ダンジョンの自動生成」「装備のランダムOP」「階層ごとのボス」「階層ごとのストーリー」
という辺りを作成することになりました。
-- 開発において苦労された点があればお聞かせください。
処理速度に関してとても苦労しました。
今回は初めてのUnityで、かつ初めての「3D作品」でした。
PC用のゲームとしてならばある程度無茶が出来たと思いますが、スマホで動作するゲームのため、開発中何度もFPSが下がることがあり、処理速度の改善に苦労させられました。
-- 今後のアップデートについて計画があれば教えていただけますか?
しばらくは中国語対応を行います。
クリア後の要素やダンジョンに更なるメリハリを付けるための対応等、考えていることはありますが、実際に実装するかは検討中です。
一応エンディングのあるアプリで最後まで作成しましたので、区切りを付けるのも良いかと思っています。
ゲームクリエイターとして
-- ゲームを開発する上での悩みや課題はございますか?
1つは開発速度ですね。本業ではないため開発時間が思うように取れず、どうしても開発が長期化してしまいがちです。
目標は4ヶ月で1本、つまり1年で3本出したいと思っていますが、中々厳しいです。
時間が無い中でどうしたら早く制作出来るか、制作に関する工夫を日々続けており、使えるものは何でも使いたいと思っています。
その点、UnityではAsset Storeがあるため、非常に助けられています。
次回作ではitemstoreも検討させて頂きたいと思っていますよ。
-- ありがとうございます!それでは、本作以外も含めて、これからの取り組みについてお聞かせください
直近では魔王と迷宮の中国語対応をメインで進めていきます。
それと1年で3本・・・はちょっと無理そうなのでひとまず、2本リリースすることを目標に制作を続けて行きます!
現在目標に向けて新作も制作中です。
-- ゲームのマネタイズについてはどのようにお考えですか?
素材制作依頼や、Asset Storeの利用、サーバーの稼働資金の確保など、活動を続けていくために、今後も広告とアプリ内課金を入れていく予定でいます。
ですが課金がメインになってしまうようなゲームは作りません。あくまで課金をしたらクリアまでが楽になるという感じで実装します。
課金が必須ではないため、広告も入れることになります。
ただし、広告が邪魔でゲームにならないということは無いようにしたいと思っています。
また、広告は必ず課金で表示しないことが出来るようにする予定です。
-- ちなみに、itemstoreについてはご存知でしたか…?
申し訳ございませんが知りませんでした。
・・・と思っていましたが元「appC cloud」さんだったのですね。旧名は知っていましたし、利用したこともあると思います。
-- ご利用ありがとうございます(笑)itemstoreの印象はいかがでしたか?
課金はゲームのシステムを作る所よりも慎重に作らなくてはいけない部分だと思っています。
不具合があったときに一番問題になる部分だからです。
そこのサポートをして頂けるのは非常に助かると思いました。
-- ゲームクリエイターの視点で、他にもこんなサービスがあればいいのにと思うようなことはございますか?
使いやすいデータ管理系のサービスは欲しいなと思います。
現状はDBを使って全てのデータを直接管理しています。
しかし、端末間の引き継ぎだけサポートしてもらえれば、普段はローカルでファイル保存で良いというケースや、マルチプレイ時のみ他端末とデータをやりとりしたいというケースやログインボーナス系の処理を管理したいというケースが考えられます。
部分部分でデータの管理をサポートしてもらえるサービスがあると良いなと思います。
-- ゲームクリエイターとして、ゲームをプレイするユーザーについて意識されていることや知りたいことはございますか?
スマホをゲームの動作端末とした場合に、どのようなゲームが一番需要があるのかというようなことは知りたいですね。
例えば、操作が簡単なゲーム、短時間で出来るゲーム、マルチなど複数人プレイに対応しているゲーム、RPGのような長編ゲーム、ソーシャル要素のあるゲーム、放置出来るゲームなど。
他にはスマホでゲームをプレイするシチュエーションなども気になります。
電車内、就寝前、休日など。
-- 最後に、自作ゲーム開発を志す方々へのメッセージやアドバイスをいただけますでしょうか
私自身まだまだ勉強中の身なので偉そうなことは言えませんが、自作ゲーム開発で大事なのは技術力やセンスではなく、「完成させる」ことが一番大事だと思っています。
どんなに面白いゲームを考えても完成させなければ遊んでもらえません。
特に個人で開発している場合は、必ず停滞する期間が出てきますので、そこを「工夫」や「根性」で乗り切るのが一番大事なことだと思います。
-- ありがとうございました
インタビューを終えて
とにかく全体的なクオリティの高さが光った『魔王と迷宮』でしたが、くろさんご自身は過去にもこうしたコンテストで何度か受賞された経験がおありとのことですから、納得のいくお話でした。
また、その陰には奥様のご協力があったとのこと、とても素敵なご夫婦ですよね。
専業ではない個人がゲーム開発を行っていく上でのヒントも色々とうかがうことができましたが、やはり「完成させる」ことが一番大事という言葉が最も印象に残りました。自分も途中で挫折しがちですが、とにかくまずは世に出してなんぼだなと…。
作業途中や頭の中で眠っている作品をお持ちの方は、とにかく完成を目指して、ゲーム開発にチャレンジしてみてください。